大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(新を)1595号 判決 1950年6月03日

被告人

斎藤進

主文

原判決を破棄する。

本件を千葉地方裁判所木更津支部に差し戻す。

理由

弁護人浜名儀三の控訴趣意第一点について。

昭和二十四年十一月八日附原審第八回公判調書を閲するに、同公判において出席の検察官五十嵐末吉が被告人に対する検察官作成の供述調書の任意性を立証するため自らを証人として申請し裁判所の許可を得て宣誓の上証人台に立ち該供述調書作成当時の状況等につき供述したことは所論の通りであつて、右の如く公判立会の検察官が自ら証人として供述をなす場合には最早公判立会の職務を執行する検察官たる資格を喪失するものと云うべく、従つてかかる場合には改めて他の検察官の出席を求めその出席の下に審理をしなければならない。然るに前記公判調書によれば五十嵐検察官の右証人としての陳述に際り他の検察官が出席した形跡を窺い得ないので、同公判中右五十嵐検察官が証人として陳述した部分の手続は違法たるを免れない。しかしながら、原判決は同公判における右五十嵐検察官の供述も被告人に対する検察官作成の供述調書も共に原判示事実の証拠に引用していないのであるから前記公判手続に右のような違法があつても、これがため判決に影響を及ぼさないものと云うことが出来る。従つて論旨は結局理由がない。

(註 本件は擬律錯誤により破棄差戻)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例